金井芙三枝  江口隆哉・宮操子 アーカイヴ公演について

DAiJ2014 宮 操子「タンゴ」写真1/写真2/写真3(2014/3/6,7,8)
DAiJ2014 江口隆哉「日本の太鼓」写真4/写真5(2014/3/6,7,8)
DAiJ2015 江口隆哉「スカラ座のまり使い」写真6/写真7/写真8/写真9/写真10/写真11(2015/3/7,8)

☆2010年5月 江口・宮アーカイヴの始まり
江口隆哉は1900年1月21日に生まれ1977年12月25日77才で亡くなりました。宮操子は1907年4月15日に生まれ2009年5月7日102才で亡くなりました。2010年5月、宮操子の命日に泉岳寺に墓参の帰り、門下生たちが近くのおそば屋で昼食をとりながら、「三回忌に記念の会をいたしましょう。江口隆哉・宮操子の名作再現はいかがでしょう」という提案にヨネヤマママコさんの「それは江口・宮アーカイヴってことね」という発言があり、早くも会のタイトルが決まりました。

昔、江口・宮舞踊団員として踊っていた門下生たちは、今や80才か、それ以上となり、皆、ぼける寸前にきています。「やるなら今でしょ!」と意見がまとまり、その日からアーカイヴ公演にむかって突進しました。

☆2010年8月「スカラ座のまり使い」を夏期舞踊大学講座で教える
現代舞踊協会の夏期舞踊大学で、講習生に「スカラ座のまり使い」を教えるように研究部から依頼されました。

江口隆哉は器用な人で、人前で手品などをして見せるのが得意でした。そして東北人独得のペーソスとユーモアのある人でした。その個性が「スカラ座のまり使い」にぴったりとはまって彼の唯一の(ソロ作品)名作となったのです。1935年の作品ですから1分10秒ほどの不鮮明な映像が残っているだけで、あとは、私共、古い門下生の頭の中に残っている記憶をもとに再構成して教えました。

講習生の中に、江口先生の作品を私共後輩が踊るなどということは恐れ多くて憚るという発言をした人がありましたので、そういう考え方もあるのだということに気づき、振りを思い出せる限り正確に模したものと、その動きを自分流に変化させて踊るオマージュ作品とを並べて見せるのも面白いと考え、翌年のアーカイヴ公演ではそれを実現させました。

細部の動きが難しい「スカラ座のまり使い」は正確に踊れる人はいませんでしたが、講習生の中で最も江口隆哉の振りを踊りこなせた木原浩太さんを選びました。ペーソスとユーモアはちょっと不足でしたが、初演、江口隆哉35才の時なら、こんなだったかなと思えます。

☆2011年5月 初めてのアーカイヴ公演
タイトルは「宮操子三回忌メモリアル 江口・宮アーカイヴ」会場は日暮里サニーホール日時は5月14日(土)14時、18時、15日(土)14時の三回公演で演目は日本の太鼓(初演1951年)プロメテの火 第3景 ―火の歓喜―(初演1950年)スカラ座のまり使い(初演1935年、江口隆哉)タンゴ(初演1933年、宮操子)春を踏む(初演1943年、宮操子 振付 江口隆哉)

☆2014年6月「日本の太鼓」「タンゴ」  新国立劇場 ダンス・アーカイヴ in JAPAN Ⅰ
「日本の太鼓」は、江口隆哉の三回忌の時に(1979年2月6日 於:郵便貯金ホール(現在のメルパルクホール))西田堯、池田瑞臣等によって上演されたビデオがあったので、2011年のサニーホールは、1979年版を見て振りを起こし上演しました。2014年の会では、大体2011年版をもとに、2、3の間違いを発見して直し、上演しました。

振りの方はそれでよかったのですが、ササラ(背中につける2m42cmの長い竹)については、全部新しく作りました。初演の1951年から60年もたった2011年のサニーホールでは、すでによれよれになっていてとても踊りにくそうだったので、次の公演があるとしたら作りかえなければならないと考えていましたところ、間もなく新国立劇場主催でダンスアーカイヴが企画され「日本の太鼓」を上演してほしいとお話があり、農閑期になるのを待って、2012年12月に入るとすぐ岩手県奥州市の教育委員会歴史遺産課を通じて、昔、江口隆哉が製作を依頼した鶴羽衣(ツルハギ)の及川喜孝氏(代は変わっていました)にササラの寸法と数を言い、竹を伐って上半分を裂いて送ってくれるように頼みました。

太鼓の皮革も、もう古くなって2011年サニーホールでは一枚破れましたので余分にもう一枚買っておきましたところ、やはり2014年のこの公演では又、一枚破れて丁度用意しておいたものが役に立ってよかったと思いました。頭(カシラ:頭のかぶりもの)については角(ツノ)が大きいので折れてしまうことがあります。江頭良年さんが舞台稽古の時にはつきっきりで修復をしてくれました。

「日本の太鼓」は装束に人手がかかります。1人の踊り手に2人の付き人がつき、着付けを手伝うのは勿論のこと、踊る度に汗びっしょりになった肌襦袢や体に巻いたサラシや足袋などを洗濯し乾かして、次に備えます。坂本秀子舞踊団の若手が献身的に働いてくれました。「日本の太鼓」のササラ、太鼓、袴などは、かつて宮操子が講師をしていた関係で、日本大学の所沢校舎の倉庫に、古い美術品として保管されています。公演の時は特別にお願いしてお借りするわけですが、ササラ等を新しく作りかえても保管はしてくれません。ですから、よれよれの古い方のササラをお返ししました。

もう一つの作品「タンゴ」は2011年サニーホールで吉垣恵美が踊った「正調タンゴ」の振りを中村恩恵に踊ってもらいました。

☆2015年3月「スカラ座のまり使い」  新国立劇場 ダンス・アーカイヴ in JAPAN Ⅱ
2011年サニーホールでの正調とそのバリエーション2種の上演がよかったとのことで、今回は以前と違った2種を考えてくださいというプロデューサーからのご要望があり、正調の他は日本舞踊バージョンと男性デュエットバージョンにしました。

☆2016年5月「プロメテの火」全景
江口隆哉は、著作「舞踊創作法」の中で、創作の実例として「プロメテの火」と「日本の太鼓」をとりあげてその創作過程をくわしく書いています。まだビデオがなかった時代、記録は紙に書くしか方法がなかったのです。私は、この二作を後世に残したいという江口隆哉の遺志を感じ、復刻上演をめざしていましたが、彼が設立の準備委員でもあった新国立劇場で、2016年5月28日(土)・29日(日)に「プロメテの火」全景を上演できることになり、現在、古い門下生の記憶と江口隆哉の記録文と写真を頼りに思い出せる限りの動きをくみ入れて再構成しているところです。

 

 

日時
DAiJ2014 宮 操子「タンゴ」写真1、 江口隆哉「日本の太鼓」写真2
2014年6月6日(金) 開演19:00
2014年6月7日(土) 開演15:00
2014年6月8日(日) 開演15:00

DAiJ2015 江口隆哉「スカラ座のまり使い」写真3,4,5
2015年3月7日(土) 開演15:00
2015年3月8日(日) 開演15:00
会場
新国立劇場 中劇場
チケット
A席 5,400円 B席 3,240円(DAiJ2014 宮 操子「タンゴ」写真1、 江口隆哉「日本の太鼓」写真2)

S席6,480円 A席5,400円 B席4,320円 C席3,240円(DAiJ2015 江口隆哉「スカラ座のまり使い」写真3,4,5)
主催
新国立劇場
出演者
DAiJ2014 宮 操子「タンゴ」:中村恩恵
DAiJ2014 江口隆哉「日本の太鼓」:大神田正美、坂本秀子、長谷川秀介、岩澤 豊、木許惠介、山本 裕、髙橋純一、鈴木泰介
DAiJ2015 江口隆哉「スカラ座のまり使い」:Ⅰ 木原浩太、Ⅱ 西川箕乃助、Ⅲ 佐藤一哉・堀 登

DAiJ2014 宮 操子「タンゴ」、江口隆哉「日本の太鼓」
DAiJ2015 江口隆哉「スカラ座のまり使い」

作品責任者:金井芙三枝

江口隆哉・宮操子 アーカイヴ公演について