速報!江口隆哉のプロメテの火 初演から66年ぶりの完全復元公演が決定!

2015.12.09

ギリシャ神話を題材にした、1950年帝国劇場初演の長編舞踊作品「プロメテの火:江口隆哉」が、66年の時を経て新国立劇場にて完全再演いたします。幻のスコア譜と呼ばれた  伊福部昭の「プロメテの火」自筆譜の発見を機に、江口隆哉門下生による再演への気運が高まり、このたびプロメテの火全景の復元・再演が実現しました。

今回の公演で使用する江口隆哉と伊福部昭の同時作曲(注1)による「舞踊音楽 プロメテの火」は、舞踊作品を上演するためだけに録音された貴重な特別バージョン(リンク先「舞踊音楽「プロメテの火」譜、復元作業開始」参照)で、現代舞踊ファンのみならず伊福部ファンも本公演は見逃せません。

江口隆哉が演じた主演のプロメテ役に首藤康之、宮操子が演じたアイオ役に中村恩恵をキャスティング。魔神役には清水フミヒトを配し、市伊孝、松永雅彦ら気鋭の舞踊家を筆頭に、ベテランから新人まで幅広い世代の舞踊家・ダンサーが結集し、巨編作品の再演に挑みます。

江口隆哉の群舞創作の粋が凝縮する「プロメテの火 第3景」は、川端康成の小説「舞姫」のモチーフ(「むしろ、美しいもの、充たされたものを求めて乱舞する人間永劫回帰の姿の象徴」として描かれている -三島由紀夫-)ともいわれており、その躍動感と大群舞の迫力で表現された「第3景:火の歓喜」は、本公演の見どころのひとつです。

1950年から10年間にわたり100回もの全国公演を行った伝説の現代舞踊公演「プロメテの火」。たった2日間だけの完全復元公演を、どうぞお見逃しなく!

プロメテの火プログラム
1. プロローグ
2. 第1景:火なき暗黒、アイオの踊り
3. 第2景:火を盗むもの
4. 第3景:火の歓喜
5. 第4景:コーカサスの山巓(さんてん)

チケットは2016年1月7日発売開始です。「プロメテの火」特設Webサイトはコチラ

(注1)同時作曲:ニジンスキーとストラビンスキーの「春の祭典」など、舞踊家の舞踊創作過程に作曲家が立ち会い、作舞と作曲をリアルタイムに行うことでお互いが創作的刺激を受けるなどシナジー効果も期待できる創作手法のひとつ。


川端康成氏の小説「舞姫」の中に江口隆哉、宮操子舞踊團が旧冬公演して世に問うた群舞「プロメテの火」のことが取扱われている。これには色々の批評があったが、オペラやバレエよりもずっと抽象的なモダン・ダンスに、日本的な独特な味を出そうとした試みは認めてもよいものだった。

プロメテが一茎の枯れアシで太陽の火を盗んで人間に与える。暗黒の中にうごめく人間の群舞は地獄編の場面を思わせたが、火を得た数十人の男女がともしびを明滅させながら歓喜の絶頂へと高潮する群舞には日本の盆踊りの調子を緩急さまざまに採り入れていた。群衆が長い髪の毛をリズミカルに振り回す所作には“鏡獅子”の典型美を群舞に応用して野性の美を表現しようとしていたし、オーケストラの編曲にも日本の村落民謡の味を出していた。

松明をかざして踊る江口氏のプロメテのどこかには「能」の舞いにある面(おもて)を切る古典美を生かそうと試みていたのも見逃せなかった。

川端康成も見た「プロメテの火」初演 「天声人語」より
( 朝日新聞  昭和26年2月28日掲載:荒垣秀雄著)