第42回(令和6年)江口隆哉賞 授賞者のお知らせ

2025.12.08

第42回 江口隆哉賞授賞、藤井 香 氏に決定しましたのでお知らせいたします。

藤井 香

 
《受賞のことば》
このような栄えある賞に選考していただき、誠にありがとうございます。小さな活動を見ていて下さった選考委員の皆様、作品の命綱となって下さったダンサーやスタッフの方々、そして様々な場面で応援して下さった皆様に、深く感謝申し上げます。
今回評価していただいた「最悪の悪」「あゝ、個人-有事と私についての考察-」には、現在の社会状況に衝撃を受けながらも、対峙することのできない自身への戒めのような側面があります。このような不甲斐無い有様を不甲斐無いままに映し出した作品でしたが、いつの日か、その先の指標を見出せる作者となれるよう努力していきたいと思います。また、江口隆哉賞受賞後も、前作までに培ったものを壊して新たな目で創作に向き合う勇気を持てるよう頑張ります。

※江口隆哉賞
わが国における現代舞踊の振興と協会の繁栄に尽力した故江口隆哉元会長の功績を記念して、1983年に制定されたもっとも権威ある現代舞踊賞です。毎年1月1日~12月31日までの期間、優れた現代舞踊作品を創作発表した作者に対し、過去の実績を加味し授与しています。

第42回江口隆哉賞選考委員
舞踊評論家/池野 惠、立木燁子
一般社団法人現代舞踊協会/同常務理事 加藤みや子、坂本秀子、同理事 馬場ひかり、同理事長 野坂公夫

 

一般社団法人現代舞踊協会 第42回江口隆哉賞 藤井 香


「平気に踊るvol.3」公演より「 あゝ、個人-有事と私についての考察-」撮影:スタッフ・テス

受賞理由
彩のくに創作舞踊団を率いる藤井香の活動は、一見地味に見えるものの、内実は鋭利な刃物のような鋭さを秘めている。
『平気に踊る』は小品のシリーズながら、機知に富む発想が独創的な振付言語に変換され、意表を突く動きが新鮮な説得力を生み出している。12月公演『平気に踊るvol.3』(12月22日、於シアター・バビロンの流れのほとりにて)で披露された『あゝ、個人―有事と私についての考察―』は、現代人の心理的分析を試みているかに見える。閉塞感の強い時代に個人と社会の関係性を探り、時に内面を抉り出すように、時に辛辣な批評性を湛えて個人の置かれた状況(有事)を活写しており、同時代性が光る。
7月の東京新聞主催現代舞踊展で発表された『最悪の悪』(7月31日、於めぐろパーシモンホール)も照明を含めた空間演出が緻密で、観客の視線を巧みに操作する。反復と切断により主体と客体を反転、虚構とリアルを綯い交ぜにしながら印象的な舞台を生み出した。深刻なテーマを軽快に、シニカルに今日的な表現に昇華させる芸術性を評価したい。江口隆哉賞受賞を機に意欲的にさらに大きな作品に挑んでもらいたい。
略歴
1962年生まれ。幼少より両親(藤井公、利子)のもとでモダンダンスを始め、1978~98年東京創作舞踊団ソリストを経て1998年 彩のくに創作舞踊団を結成。「穴と石積み(’05年)」、「全てを見ることのできないダンスパフォーマンス『アパートメント』(’08年)」等を発表の他、2019年より「平気に踊る」シリーズを開始。「限られた中にある無限」「あゝ、個人-有事と私についての考察-」等を発表。その他、2026年に一般社団法人埼玉県舞踊協会のアウトリーチプロジェクト「コレオグラファーの目」を立ち上げ、埼玉県立近代美術館でのパフォーマンスや「足袋nce@能楽堂(於こしがや能楽堂)」「#Morince柔らかな風と森編(於国営武蔵丘陵森林公園)」等の企画運営に携わる。また、2008年よりSMF(Saitama Muse Forum)の建築・文学・美術・電子音楽・コスチューム等との協働ワークショップやパフォーマンスの企画運営に携わる。
1985年 現代舞踊協会新人賞、群舞賞。1988年ローザンヌ国際新人振付家コンクール:ベジャール・バレエ・ローザンヌ賞。
NHK特集「かおりの挑戦~ローザンヌ振付家コンクールの25日間~」放映。
1992年 現代舞踊協会奨励賞受賞。