折田克子 石井みどり作品「体」

DAiJ2015 石井みどり「体」

1961年、石井みどり作「体」(ストラビンスキー曲:春の祭典)再演にあたり、ダンサーとして、又ミストレスとして関わってきた私が、今回、再演の責任者として石井みどりの作品と新たに向かい合いながら様々発見をしつつ、本番へと取り組みました。初演プログラムは、古事記から引用された文章が掲載されており、このストラビンスキー「春の祭典」という曲から、生贄の物語や、スペクタクル舞踊を想像するものが多い中、石井みどりがこの名曲から得たインスピレーションは「自然と生命力」であり、この大作は「体(ボディ)」として人間賛歌へと向い高く評価され、文部大臣賞、芸術選奨、芸術祭個人演技賞(折田克子)を受賞、当時としては、革新的な作品であったと思う。

・ダンサーとのコミュニケーション
まずこの「体」という作品、石井みどりの「自然と生命力」を表現していくには、この変拍子の多い曲を駆使しなければならなかった。曲は伴奏にあらず*1、身体がとらえ発信するまさに「体」である。

ダンサー達には、まず自分で曲が歌えること!= 呼吸であり(純度)、それによって身体から発信されるメッセージとなることに挑戦してもらった。

そして、オフバランスの曲線と直線とのせめぎあいの動き、重心移動によって運ぶ足、中心から裏へボディを使うこと又、動中の静等に、ダンサー達は格闘。しかし、それぞれの個性は失わない存在であること。ダンサー達が最後に至るまで、努力してくださった成果は、終章の見事な人間賛歌へと謳歌し、生き生きとしたエネルギーが伝わったことに、ありがとう!の一言、感謝致しております。

・石井みどり作品に対する条件
今回作品を立ち上げるために、以前のDVDをみつつ、石井みどりのコメント(文句)をなんとか今回こそクリアできないか!と考えた。

「目に付す闇」「上のない下」等のコメントは、まさに今、直面している地球・宇宙・生き物と科学との反比例する問題等、作品を理解するうえでの条件となりました。常々、「目は心の窓です」と申してた母、目では見えない闇こそ心の目(魂)なのではないか。又、作品を進めていくにあたり、エロス、生き物の共存する条件、命、、、とつらなっていく人間のあり様が見え、生命の賛歌へと進む助けとなりました。尚、故:天才・前田哲彦のよりシンプルな衣装デザイン・舞台装置は、動視覚*2として、見事な舞台効果となり、作品のスケールをも象徴、「体」との共存となりました。

・当日の主な皆様からのコメント
・海外の方々より「繊細にして大胆」
・ストラビンスキーに見てもらいたかった。
・舞台のパワーにより終演時に、すぐに席をたてなかった!
・春雷に打たれたような驚き!
・想像や期待をはるかに超えたエネルギーでした。

最後に、この公演を支えて下さいましたスタッフの方々、現代舞踊協会、主催頂きました新国立劇場に厚く御礼申し上げます。

*1 曲は伴奏にあらず
石井みどりがよく口にしていた言葉であり、「音楽はそれのみで完成されているものなので、舞踊家は音楽を完全に理解し自分のものとしなければならない」というのがその真意である。

*2 動視覚
前田哲彦と石井みどり・折田克子との間で、単なるセットとして舞台上に置くのではなく、「ある程度動かしましょう」というやり取りの中で生まれた言葉。

 

 

日時
2015年3月7日(土) 開演15:00
2015年3月8日(日) 開演15:00
会場
新国立劇場 中劇場
チケット
S席6,480円 A席5,400円 B席4,320円 C席3,240円
主催
新国立劇場
出演者
酒井はな 佐々木大     青木香菜恵 上原杏奈 大橋美帆 小倉藍歌 北島 栄 小堀秀子 ジョンカス山岡有美 関口淳子 高 瑞貴 高橋あや乃 田中朝子 土屋麻美 西園美彌 沼田万里子 幅田彩加 藤井彩加 東泉雪絵 藤田恭子 船木こころ 堀米優子 松永茂子 宮田 幸 米沢麻祐子 飯塚友浩 大前裕太郎 木許惠介 坂田尚也 鈴木泰介 高比良洋 土田貴好 能見広伸 林 敏秀 水島晃太郎 山本 裕

DAiJ2015 石井みどり「体」

作品責任者:折田克子

ダンス・アーカイブ in  JAPAN  2015  石井みどり作品「体」